続・水景工事。
昨今は池を造る工事は減りつつある。逆に池を埋めてほしいという依頼は多い。
しかし様々な庭の形がある中で突き詰めていくと、最終的には「水」に対する思いが自然と湧いてくるような気がする。
地球をはじめとするすべての生物は水で出来ている。創造もするし破壊もする。地球上で一番強いのは水かもしれない。
谷川の荒々しい渓流や、緩やかなせせらぎ。穏やかな湖に映る月とか様々な水のあり方。
黒田官兵衛の「水五訓」も私は好きだ。
一.自ら活動して他を動かしむるは水なり
二.常に己の進路を求めて止まざるは水なり
三.障害にあい激しくその勢力を百倍し得るは水なり
四.自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるは水なり
五.洋々として大洋を充たし発しては蒸気となり雲となり雨となり
雪と変じ霰(あられ)と化し凝(ぎょう)しては玲瓏(れいろう)
たる鏡となりたえるも其(その)性を失はざるは水なり
特に五番目。「常に自然の理(ことわり)にそって物事を考えよ」ということ。
「水は温度の変化、器の形によって次々と自らの形を変えます。
しかし、その本質は一切変化することがありません。
我々人間もまた、変化に対応するのに常に柔軟でなければいけません。
与えられた環境の中でいかにして最大の努力を行えるかが大切です。」という意味合いだ。
そうでありたいものだと思う。
そんな「水」への憧れと畏敬・親愛の念を顕現しようと、この「水と木の庭」yamaichi garden を作庭しているのだ。
建築の基礎から、15㎝の厚さで75㎝張り出す。先端は先細りにする。
写真上部鉄筋の部分だ。要はコの字の基礎を作り、水を建築にぶつける。
コンクリートの外は違った仕様になるが、その部分も水盤になる。
西側から見ると、建築が水に浮いているような感覚をねらう。
現在の計画では貯水量合計は約50t。ピンとこないが。かなり多い。
池ともいうが水盤ともいう。水面に月が映るように。水が鏡になる夜。
雨の降る日には、雨どいの無い屋根から雫がサラサラとこの水盤におち、波紋が揺れる計算だ。
それを窓辺で眺めていると。。眠くなってしまうと思う。 そう、寝てしまえばいい。
場所は変わって、店の裏。業務用通路。
長い直線を枕木を使ってアプローチを造っている。
ここもきちんと庭の一部として妥協しない。
途中、煉瓦を入れ込む。今はなき深谷煉瓦。
工事で出土したものを一年前からコツコツ貯め、ここで使おうと思っていたもの。
昨年から入社したモルドバ共和国出身のビタリがランダムに敷いている。
造園のキャリアは10年近くある。
東ヨーロッパ出身で寒さに強いと思いきや、かなり苦手らしい。
ここ、業務用通路もお店を運営するうえで大切だ。
お店のスタッフは勿論、様々な搬入業者さんたち、通る人の気持ちを和らげるのが庭の役目である。
ここも力を入れていこう。
つづく。。。。。