二年程前から計画していた庭の改修。色々煮詰めてこのたび着工となりました。
日頃より、経営者としての有るべき姿勢をご指導頂いているR師に恩返しを込めて、
そして奥様にとって管理がしやすく、癒しを得られ、さらにお母様も喜ぶ空間を考え作庭しました。
住宅の建築と同時に外構も作られたようです。庭の銅線と若干の植栽は施して有りましたが、月日が
立つにつれ管理が難し くなってきたそうです。なにより、夏場は庭に面した部屋が照り返しで暑くて
窓際さえ近寄れないと。そして雑草が繁り、奥様の好きな草花を植えても枯れてしまうそうです。
そのすべてを解決した庭になる為雑木をメインにまずは夏場の良い環境
を造ろうと計画しました。この地域の気候に強いコナラ7mを軸に木々がお互い
競り合いながら育つ落葉樹を、この組合せならば健全に育つという配置でもって
植えていきました。そこに常緑を織り交ぜ周囲との視線をなるべく遮れるように
も考えています。そして一番肝心な土。赤土とバーク推肥をまぜ、水の抜けずらい
層をほぐし、根の健全な成長も促しています。さらに落葉樹がつくる木陰に適した
下草を植えこみ、雑草の繁殖を抑えると共に綺麗な花もみることができます。
あとは奥様の植えやすい場所に草花を植え替えできるスペースをとってあります。
夏の木陰を造るという部分では、コンパスで方位を確認し、太陽の動きを見ながら
植える樹高、葉張りが肝心になってくるため、そこの選定には1本1本かなりの時間
を掛けました。そして今まで庭に出て一服することが殆どなかったR師ですが、是非とも
庭で木々の良さを感じながら休んで頂けるように一角に休息スペースを設けました。
庭のアプローチも直線だった頃からみると、曲線になった今は庭が広く感じると思います。
実は、照明の高低、木の配置、樹種選定、花台の高低、石積み、アプローチの曲の切り方
すべてに遠近感を出す技が入っています。これは古くから日本の庭に伝わってきた伝統技法
のひとつであります。時代が変わり洋式な建物、現代的な庭になってもこのような技を入れる
ことで、人の心がどこか落ち着く空間となります。もともと日本人がそんな趣を感じ取る感性を
持っている事を先人たちは庭の世界でも伝えてきました。私たち現代の造園家もこの
伝統技能をしっかり学ぶ事で、平成の庭造りの中に新しくも奥ゆかしい空間を創造
できるのだと思います。